王様は悪戯

私は王様を見る
王様は悪戯っ子がするみたいな笑いを私に向ける

「余からはアン・ジェに何も指示はせぬし、今日の脂溢性脫髮目通りが済んだらアン・ジェには暫く与えてやれなかった休みを与えてやるつもりだ。
そう、そう、アン・ジェに近い禁軍兵士20名にも同じだけの休みをやらねばな…そして、その休みの間そのもの達が何処で何をしていようと余の知った事ではない…
ただ、禁軍兵士たる者、王に献上されねば成らぬ物が奪われそうになっておる現場に立ち会ったとなれば、戻ってくる者達の加勢をしても何の問題も無かろう?違うか?」

王様はそう言うと私の顔を見て私の出方を見ていらっしゃる

「…王様、このチェ尚宮、少々呆れております…。何時からその様な悪戯を為さるように…?」
私がそう言うと王様は笑う

「狸と狐ばかり相手をして居るとどうも、意地悪くなってしまってな…裏の裏を掻きたくなって仕方が無いのだ…それに、今回はその中の古狸が相手であろう?此方も使える駒は存分に使い、頓知を働かせねば…のぅ?」
その笑みは確かに柔らかい、何時もの王様の笑みであると言うのに何故だか背筋が凍るように感じた…

まだ柔らかい笑みを称えていらっしゃる王様にもう一つ問うてみる

「何故、一度かの地へアン・ジェを?」
そうだ、最初から都に居ればこのように面倒臭い事をせずとも良かったのでは…
私はそう思い王様に聞く

「アン・ジェが此処に居らんと錯覚して貰わねばならぬのよ…。古狸もアン・ジェとあの者との繋がりは知っておろう?
そうなればどうしてもこの都にアン・ジェを足止めをしようとする…だが、かの地へアン・ジェが行く事だけを匂わせ、確かめさせる為にアン・ジェには一度かの地へ行ってもらわねばならなかった…お陰で、今都には古狸の手下はかなり少なくなっておる…殆どの者は例の場所に集結しつつある…
あの者達には餌となって貰って…ついでに一網打尽と行こうと思っておる。」

王様はそう仰ると先程までの笑みは消え、前に居る私には目もくれずどこか遠い所を見据え、睨んでいらっしゃる

どうやら、この王様もあやつ同様かなり怒っていらっしゃるようだ…
文官共の勝手気ままな動きに

元との戦いには何とか勝利はしたが、この高麗にまだ本当の意味での平穏は訪れておらぬ
そんな、このような時期に、自分の私利私欲のため高麗に必要な人材を王様から盗み、自分たちの手駒にしようとする輩に対してこの王様は何時もの優しい笑みの下、阿修羅の如く怒っておられたようだ…

古狸達は王様の逆鱗に触れたのだ…
王様の怒りを静める為には…もう殲滅しか、無いのだろうと思う…
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